愚者の仮面

スポンサーサイト

--/--/-- --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Top ▲

花一華<隣>

2017/02/10 15:00

 「花いちか」という少女は、恋多き女として校内に知れ渡っている、らしい。

 まぁそんなこと、この学校に入学して未だ1か月のおれはよく知らない。
 というか、どの人なのかもいまいち分かっていない。
 友人らは「見れば絶対わかる」っと言ってニヤニヤしていたが、未だに誰なのかぴんと来ないまま部活動にいそしむ生活に明け暮れていた。

 我が校のサッカー部は、まぁ、毎年そこそこの成績を出すせいなのか諸先輩方にはファンがついているらしく、練習はいつも見守る女生徒たちでにぎやかだ。
 あのなかには先輩たちの彼女もいるらしい。甲高い声で思いっきり彼の名前を呼んでいるので非常にわかりやすい。
 ……ああ、そういえば、指導してくれてる先輩の彼女も、あのなかにいるはずなんだっけ。

「先輩、ひとつ聞いてもいいっすか」
「なんだよ」
「あのなかの、どの人が彼女なんですか?」
「ナイショ」
「えー」
「いいから集中!」

 むすっと黙り込んでしまった先輩の目を盗んで、ちら、っと応援の群衆に目を向ける。

 グラウンドの、応援団の端の方に二人組の少女を見つける。
 片方は見覚えがある。委員会が一緒でそのたびに見かける程度。だけれど部活の時にも見かけるものだからすっかり顔を覚えてしまった。
 関わりがあるわけではないので、向こうは俺のことなど知りもしないだろう。

 委員の会議の時に背中越しに聞いただけだが、彼女は同じ委員のクラスメイトに「花さん」と呼ばれていた。
 彼女が噂にきく「花いちか」という少女なのだろうか。
 どうもパッと見ただけではそういった印象はない、普通の女の人だと思った。
 
 彼女は今日もサッカー部の練習を応援しながら、隣にいる友人と楽しそうになにごとか話している。
 その笑顔は委員会活動の時にはみられない、親しいものだけに向けられるものだ。
 あの人は誰のためにこの場にいるのだろう。おれではないことだけは、確かだが。

 彼女たちがグラウンドへと視線を戻した。
 途端、ふっと真正面に絡み合う視線。彼女の瞳が真っ直ぐに俺を見ていた。
 深い意味はないけれどなんだか気恥ずかしくなってボールへと意識を戻す。

 それでも視線が背中を追っているような気がして、その日はうまく練習に集中できなかったのでだった。 

 本当の「花いちか」という人を、外見も声も性格も、おれはなにも知らない。
 ただ、先輩の恋人だというその名前が、あの人ではないことを祈るばかり。


 <花一華<戯>に続く>
スポンサーサイト
Top ▲

comment

comment

comment form

Passのない投稿は編集できません

Trackback

Trackback URL :
http://thefoolpersona.blog136.fc2.com/tb.php/231-8e1567d3

Copyright (c) 愚者の仮面 All Rights Reserved.

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。