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花一華<恋>

2017/02/03 15:00

 「花いちか」という少女は、恋多き女として校内に知れ渡っている。

 あまり嬉しくない評判だ。少なくとも、俺にとっては。

 花いちかは今は俺の彼女だ。哀しいことに、今は、というのが付く。
 決まって1か月。それを超える前に、彼女は必ず付き合っている男と別れるのだから。
 きっと、彼女はいつものように俺のことも捨てるのだろう。
 それまで、あと一週間。

 綺麗に、きっちりと1か月。
 高校1年の4月からそれは続いていて、彼女と俺が高2になった今でも続いている。

 俺の前はバスケ部の先輩、その前は漫研の地味メガネ、その前は……俺の先輩で、もう卒業してしまったサッカー部のキャプテン。
 その頃、俺はまだサッカー部に入ったばかりで彼女の噂も何も知らず、ただ随分な美人を先輩は彼女にしているんだな、という感想しかなかった。
 それがどうだろう。今はその彼女が自分の隣にいる。

 部活の練習の日。
 いちかはほとんど俺の練習をグラウンドの端から見ていて、その美しい声で俺たちに応援の言葉をかけてくれる。
 その言葉に、ほとんどの部員はニヤつくばかりだ。ホント、ずいぶん嬉しそうなことで。
 彼女はあくまでも俺の恋人で、そのために部のことも応援をしてくれているのだというのに。

 だけど、気付いてしまった。
 最近の彼女は応援の言葉を吐きながら、俺のことなどこれっぽちも観ていない、ということに。

 練習中、彼女の視線を追う。
 その先には、俺の後輩である一年坊主が一生懸命にボールを蹴る姿。
 彼のことはよく知っている。直接指導もしている。というか、昔から面識がある。

 なにせ、俺と彼女を仲介してくれた、幼馴染みの弟だから。

 ――次は、アイツなのか。

 目の前で、目の前にいる男に惹かれていく彼女に何も言えない。
 分かっていた。初めから分かっていたはずなのに。
 アイツが彼女の最後の男になったらどうしよう、と、意味も分からない焦りで目の前が真っ白になる。
 彼女が本当の意味で自分のものにならないことを、俺は初めから知っていたはずだったのに。
 
 帰り道、彼女は俺の隣で「今日もカッコよかったよ」と笑ってキスを交わす。
 その美しい笑顔に曇りは微塵もなくて、今日も凛と彼女は花開いていた。
 邪気のない花を前に、俺はいつもどうしたらいいのかわからなくなる。

 本当の「花いちか」というのを、近くで見ているはずなのに、俺はなにも知らないのかもしれない。


 <花一華<隣>に続く>
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