愚者の仮面

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水音

2012/07/07 00:22

 灰色の空から零れ落ちる水音に心が揺れる。

 彼女は荘厳な図書館の玄関口、上から滴り落ちる水滴に指を濡らしながら雨が止むのを待つ。

 静かな世界。
 足音も聞こえないほどの雨脚の中でも、この場所は静かだ。

 ゆっくりと少女が目を閉じた。
 耳朶を打つのは細雨の柔らかな足音。

 水音が雑音を掻き消す。この場所から人の形跡を鎮める。

 気まぐれな天気、世界。
 それを考えれば人間とはなんとちっぽけなものか。

 唐突に不安になった。
 自分は本当に此処に居るのか。
 独りきり取り残されてはいないだろうか。

 全て洗い流された世界で、ただ独り此処に立っているのではないだろうか。

 まず一歩。
 己の存在を鼓舞するため、足元の水溜まりを鳴らす。

 その、一歩。
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comment

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どうもお久しぶりです!
最後の一文が力強くて、思わずコメントなぞ書き込んでしまいました。
世界から取り残されたような雨音と言えば、しんと透き通った水面にも似ているように感じるのですが、それを自分の一歩で波立たせる気分というのは、何故だか興奮しますね。

投稿日
2012/07/08
投稿者
上の空一助
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Re: タイトルなし

>上の空一助さん
お久しぶりでございます。有里馨です。

6月生まれということもあり雨が大好きなのですが、それを除いてもしんとした雨音しか聞こえない世界、というものが大好きです。
だからこそ他の気配が消えるとでもいいますか、取り残されたような気分になるのも確かで、その静寂を壊すことが命の在り方なのではないかと考えることがあります。

生きている限り壊し続けるのが人間であるからこそ、その一歩一歩が大切だと感じます。

最後の1文を書きたいがために組み立てた文なので、そこに触れて頂き嬉しかったです。
ほんの一文でこうも重みが出るとは、言葉とは本当に面白いです。

投稿日
2012/07/15
投稿者
有里馨
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